インターネット・ゲーム依存について
- 2022年3月1日
- ゲーム依存
今回は「インターネット・ゲーム依存」についてのお話です。ICD-11(改訂版国際疾病分類)やDSM-5(アメリカ精神医学会の診断・統計マニュアル)において精神疾患として認定されたことで近年注目を集めるようになっています。実際の臨床場面でも不登校の児童と関連していることも非常に多い印象を受けています。
●診断について
インターネット・ゲーム障害(DSM-5)の診断基準は
①ゲームへのとらわれ
②離脱症状(精神的)
③耐性(使用時間が増える)
④制御困難(自分では止められない)
⑤以前の楽しみへの興味喪失
⑥心理社会的問題の知識があるにも関わらず過剰使用
⑦オンラインゲーム使用の程度についての嘘
⑧否定的な気分からの逃避のための使用
⑨オンラインゲームによる社会的危機・喪失
これらのうち5つ以上が12か月続くことです。
ゲーム障害(ICD-11)の診断基準は
①ゲームに関する制御困難
②ゲームに関する優先度が他の興味や日常生活よりも高い
③否定的な結果にも関わらずゲームを継続
これらのうち3つ全てが12か月以上続くこととされています。
★診断のポイントは『ゲーム(インターネット)により日常生活に大きく支障を来していること』です。ゲーム障害で発生する問題として、課金による経済的問題、家族・対人関係の問題、学業・仕事への影響、身体的健康、精神的健康が挙げられます。ADHDやうつ状態、睡眠障害など他の精神疾患を合併していることも多いとされています。
【治療について】
治療の糸口としては、まずはゲーム依存に陥っている本人のことを理解することから始めます。ゲームに関しての知識があると共通言語で話すことができ、信頼関係の構築にも繋がります。ここ数年で私が児童精神科外来でよく聞くゲーム名はフォートナイト・APEX・マインクラフトなどです。実際にプレイしたことはありませんが、youtubeなどでどんなゲームであるかは把握しています。
特にオンラインゲームは依存性が高いとされており、その特徴として完結しない・絶えずアップデート・競争をあおるなどのゲーム側の要素と、仲間とのコミュニケーション・称賛・競争などのユーザ側の要素があります。
また、ゲームが好きでその快楽をひたすら求めて依存に陥っているだけではなく、ICD-11の診断基準の⑧にもあるように、不快な気分から逃れる(直面したくない現実から逃避する)ためにゲームをしているケースも多いです。ゲームをしながらも「このままでいいのかな」と葛藤している瞬間もあります。しかし、リアルの世界のストレスから逃れるために始めたゲーム内で賞賛され、ネット上の友達が出来ることでゲームにのめりこむようになり、気づけば様々な問題が起きていてもゲームの世界から脱することが出来なくなっているのです。
そのため、単にゲームを取り上げても根本的な解決にならず、その背景要因を探ることが重要となります。支援者が出来ることとしてはゲームの世界の大切さを尊重しつつも、のめり込んだ理由を共有し、人生でやりたかったことをするにはどうすればよいか一緒に考えることで結果的にゲーム時間を減らすことを目標とします。ゲームの世界ではなく、リアルの世界を充実させるよう支援していくことが大切になります。コロナ禍で在宅時間が増えたことでゲーム依存の増加が懸念されるため、家庭でのゲーム使用のルール設定や節度をもった付き合い方が望まれます。なお、ルール設定についても親が提示するのではなく、本人とよく話し合い、本人に決めさせることも非常に大切です。
集団での認知行動療法なども治療に有用とされているので、今後クリニックでも行っていくことを検討しています。家庭での問題行動が目立つ場合は入院が可能な連携機関に紹介する場合もあります。
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ほんわか心のクリニック 院長