うつ病について
- 2022年2月6日
- うつ病
こんにちは。開院が近づくまでは月1回くらいのペースでゆるりと更新できればと考えています。
ちなみに、内装工事については来月中旬くらいには完成になりますので、クリニックの雰囲気が分かる写真もupしていきたいと思います。
さて、今回は「うつ病」についてのお話です。
2013~2015年に厚生労働省が行った調査では5.7%の人が生涯のうちにうつ病を経験しているという報告があります。100人のうち6人、16人に1人と考えると結構多い数ですよね。
うつ病は気分障害の一つです。DSM-5(米国精神医学会の精神疾患の診断基準)では、気分の落ち込み・意欲低下が2週間以上続き、日常生活に支障を来している状態を特徴とします。
【特徴】
こころの症状:集中力の低下、気分の落ち込み、不安・あせり、興味関心の喪失・希死念慮・強い自責感・無価値感など
からだの症状:睡眠障害・食欲低下・倦怠感・身体の重さや痛みなど
特に黄色で示した症状がある場合は心療内科・精神科への受診をお勧めします。
【治療】
◎治療方針として、私は笠原嘉先生が提唱されている小精神療法を参考にしています。
①うつ病は病気であり、怠けではないこと
②できる限り休養を取ること。それが難しい場合は業務量を減らすこと
③抗うつ薬を十分量、十分な期間投与することで症状は改善していくこと
④治療には3~6カ月程度はかかること
⑤症状の改善には波があり、一進一退があること
⑥自殺しないように約束してもらうこと
⑦重大な決定(退職や転居、離婚など)は先送りすること
7項目ともすべて重要ですね。
①について、うつ病は病気であり、根性や気合で治るものではありません。まずはご本人に理解してもらう必要がありますし、ご家族や周囲の方々にも理解してもらう必要があります。足を骨折中の人に頑張って歩けとは言わないですよね?それと同じだと考えてもらって構いません。
②と③についてはこの後に述べていますので割愛します。
④について、回復に時間がかかることも予め知っておく必要があります。休養しているとだんだんと症状が良くなって、すぐに復帰できそうな気になってきます。ただし、自宅での日常生活(外出や運動、食事・睡眠、家事など)が病前のように行えていることが大前提です。それが行えていない中で、焦って復帰した場合、ストレスがかかると容易に抑うつ症状の再燃がみられるため、注意が必要です。
⑤について、右肩上がりに症状の改善はみられません。いい日もあれば悪い日もあり、1週間単位でみた時に前の週より出来ることが増えた、しんどいことが減ったなどをみていく必要があります。ご本人は病前の色々出来ていた時のイメージがあるのと否定的な認知からできていないことに目を向けがちですので、ご家族や周囲の方が回復していることに早く気づくことが多いです。そんな時には出来ていることを伝えてあげることも大切になってきます。
⑥について、うつ病になると「家族に迷惑をかけている」「自分はいない方がいい」などの否定的な認知から死にたい気持ち(希死念慮)を抱くことがあります。ただし、これは①と同じく、病気の症状として気分の落ち込み・希死念慮が出現しているためあくまでも一過性の症状であり、回復するに従って必ず消退してくるものです。ですので、⑦と同じく早まって行動することのないように注意することが大切となります。
⑦について、⑥と同様にうつ病では否定的な認知と思考力の低下も相まって、重大な決断をしてしまいがちですが、症状が回復すると考えも変わることがよくあるので、早まった決断や行動をしないことを勧めています。
◎休養が第一
内因性うつ病の場合は、責任感が強く、仕事を頑張りすぎた結果、心身ともに疲弊し、頭では仕事に行かないといけないと思いつつも、身体が限界にきている状態になっています。まずはしっかり休養を取ることが大切です。ご本人と周囲の方がうつ病を理解し、自宅におけるサポートや職場での環境調整・業務量の調整を検討してもらいます。場合によっては休職をしてもらうこともあります。
ある程度回復してくれば自宅で安定して生活が送れるように、食事と睡眠など生活リズムを整えていくことが大切です。体力が落ちている場合は、朝に散歩することもセロトニンの分泌に関係すると言われているためおススメです。自分の好きな趣味や活動に集中して没頭できるかも回復具合をみるにはよいと考えます。
自分の病気のことや困っていることを誰かに相談できる環境も大切です。職場や学校、家庭での人間関係をきっかけにうつ病になることもありますが、治すことができるのもまた「人」であると考えています。
◎薬物療法
中等症以上のうつ病に対しては抗うつ薬を中心とした処方を行い、併存する不眠に関しては眠剤を併用します。安定剤だけではなかなか抑うつ症状が改善しない例も多くあります。薬物療法は先ほどの骨折の話からすると「松葉づえ」みたいなものと考えてもらうと分かりやすいかと思います。薬物療法は最初は必要となることはありますが、ご本人のリハビリももちろん大切ですし、環境調整も重要です。松葉づえであれば、自分で歩けるようになれば必要ないので徐々に減薬をしていきます。減薬のタイミングについては相談しながら慎重に行っていきます。
◎精神療法
支持的精神療法・認知行動療法・対人関係療法などがあります。当院では心理士によるカウンセリングも行う予定です。認知行動療法などはある程度回復した状態でないと実施できない場合がありますので、カウンセリングの開始のタイミングについてはご相談ください。
◎それ以外の治療
修正型電気けいれん療法(mECT)や反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法もありますが、これらは当院では行っていないため、必要な場合は連携先の医療機関に紹介いたします。
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ほんわか心のクリニック 院長